西村幸祐氏、東京オリンピック後のスポーツ界を占うpart2

文化スポーツライターキリンコ

【(中編)ひとりの選手が日本スポーツの潮流を変える、それがオリンピックの成果】

 きり:それ以外の競技で印象に残った選手はいらっしゃいましたか?


 西村:ああ、いましたよ。陸上3000m障害の…


 きり:三浦選手ですね!?


 西村:彼は本当にすごかった。終盤にスピードを上げる走りも見事だったし、タイムも立派。(8分9秒92と日本記録を大きく更新)日本にこんな若者がいるのかと驚きました。それから女子1500mを走った田中も素晴らしかったね。今までの日本人選手とは全く違うスピードでケニアの選手とも競り合って入賞しましたからね。


 きり:オリンピック女子1500mに日本人選手が出場できたのはこれが初めてでした。出場前も標準記録の4分4秒をどうしてもきれなかったのですが、本番で突然3分59秒19。こちらも日本記録を大きく更新しました。


 西村:走るというシンプルな競技では日本人はどうしても海外の選手にかなわない。実は僕は高校では陸上の長距離選手。足は速かったが都大会の決勝に出るだけでも大変なことでした。田中選手の記録は男子と比べても素晴らしいタイムです。


 きり:先生、バスケと長距離やっていらしたなんて。私の好きな競技と完全にかぶってます…
西村:あなたも長距離やってたの? 
 きり:いえ、私は観る専門で。でも長距離は小さな大会も追いかけてまして。


 西村:それは珍しいね(笑)。長距離は全然期待されてなかったからね。対照的に期待されていた短距離は、9秒台3人という昔は考えられなかったようなメンバーを揃えながら、リレーはバトンミスで完走できず。絶望のどん底を味わったでしょうが、なんとか這い上がってほしいですね。長距離の方は今回若い2人が結果を残したことで、競技全体のレベルが上がりますよ。


 きり:そういうものでしょうか?


 西村:間違いなくそうです。1人の選手が結果を出すことで、他の選手は刺激を受けるだけでなく、自分もやれるという自信を持てる。これは個人に限ったことではなく、スポーツ全体でも同じですよ。今回女子バスケが結果を残したことで、女子はバレーボールもサッカーも大変な刺激を受けたはずです。「なにくそ」と思っている選手も多いでしょう。そうやってスポーツ界全体の潮流が変わり、底上げされていくんです。それが今回の東京オリンピックの一番の成果だと思っていますよ。


 きり:先生の心強いお言葉、嬉し過ぎます!(後編へ続く)

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