東京五輪の開始まであと70日と迫ったのに、同五輪の開催に反対する意見が多いのには驚くばかりだ。

加藤清隆の『俺に喋らせろ!』

東京五輪の開始まであと70日と迫ったのに、同五輪の開催に反対する意見が多いのには驚くばかりだ。

 東京五輪の開始まであと70日と迫ったのに、同五輪の開催に反対する意見が多いのには驚くばかりだ。そもそも共産党主導のこの動き、コロナ感染対策に名を借りた菅政権打倒だと私は見ている。このため、私はこうした左翼勢力の策動に国民は決して乗ってはならないと思っている。


 ただそれはそれとして、では実際に東京五輪が中止になる場合は一体、どういう時なのだろうか?今回はそれを探ってみたいと思う。


 東京五輪がもし中止になるとしたら、その時、キーマンになるのはやはり何と言っても菅首相と小池東京都知事の2人だろう。この2人はIOC以外では五輪開催に直接影響する力を有していると思って間違いないだろう。

 ではまず菅首相が「東京五輪中止」に踏み切る場合はどういう時か?社会学者の橋爪大三郎氏の論考を引用させていただきながら、考えてみたい。

 まず菅首相にとっての「順風シナリオ」は次のようなものだ。
 (A)コロナ対策で手を打ち、感染を抑え込む
 (B)五輪パラリンピックを開催し、日本中が熱狂する
 (C)余勢を買って衆院を解散し、総選挙で勝利
 (D)自民党総裁選で無投票再選
 (E)長期安定政権

 ではこれが「逆風シナリオ」になるとどうなるか?
 (a)コロナ感染が拡大し、五輪中止
(b)菅首相が五輪パラ中止の責任を追及される
 (c)衆院解散できず、任期満了選挙に追い込まれる
 (d)菅降ろしの動き拡大
 (e)総選挙で議席を減らし、最悪の場合自民党が下野

 つまり菅政権が五輪開催にこだわればこだわるほど逆風シナリオの現実性が増してくると橋爪氏は言う。ではそうならないためにはどうしたらいいか?私とは意見が違うが、橋爪氏はズバリ「五輪を中止すればいい」と指摘する。

 現状では五輪を本当に開催できるかどうか、なお不確定と言ってもよい。このままいくと、どんどん逆風シナリオになっていく可能性が高い。そこで世論やメディアが中止を訴え、菅首相がそれに押し切られる形になる。五輪中止に加え、最後まで決断できなければ、二重の打撃を蒙るというのだ。

 ならば皆がまだ言い出さない今こそ、決断のタイミングだと橋爪氏はいう。それは早い方が良い。小池都知事が言い出してからでは遅い。菅首相が五輪中止を決めれば、文字通りの「決断」となる。これまでどちらかと言えば、「決められない首相」とみられてきたから、これによって鮮烈な印象を与えるという。

 この決断は国民に支持される。感染拡大と五輪の間でやきもきしていた国民はこぞって賛成するだろうという。中止を決めた途端、内閣支持率は少なくとも10%跳ね上がるはずだともいう。

 しかもこの決断は、中止を発表する前に、IOCのバッハ会長や小池都知事に根回ししてはいけない。根回しすれば必ず情報が漏れる。「日本政府は五輪を中止します」とまず決め、交渉や調整は後に回す。組織委員会や関係省庁、地元自治体は混乱するだろう。しかし混乱はすぐ収束する。不満があっても、国民の圧倒的支持の声にかき消されるはずだと橋爪氏は強調する。

 IOCが約束が違うと賠償を求めてきたら、「お金で人々の安全が守れるのなら」と受けて立てば良い。こうして「決断できる政治家・菅総理」の印象は国民に鮮明に刻まれる。

 では五輪を中止した菅首相は次に何をなすべきか?
 五輪とパラが中止になれば、スケジュールに空白が生ずる。解散・総選挙はこのタイミングしかない。
 解散権は首相の専権事項。菅首相の下に自民党は結束するしかない。五輪中止で世論の追い風を受ける首相に「菅降ろし」をかける余裕はないはず。

 では総選挙の勝敗はどうなるか?少なくとも自民党の負けはないだろうと橋爪氏は読んでいる。野党は分裂して弱体。コロナも五輪も攻撃の決め手のはならず、野党に勝ち目はない。恐らく総選挙で現状維持を確保し、菅首相は自民党総裁に再選され、首相としても続投するだろう、というのだが。

 では、もう1人のキーマン・小池都知事は一体どのような動きに出てくるだろうか?
 それを考える際、ぜひ参考にしてもらいたいのは、私自身が小池氏が都知事に初当選した直後に月刊Willに寄稿した「小池百合子は必ず総理大臣を目指す」という記事だ。

 私はその時点から、小池氏の都知事はあくまで「通過点」で、上昇志向が異常に強い彼女は必ず国政に戻り、最終的には首相を目指すと睨んでいる。恐らくその見方は今も間違いないという確信がある。

 ある都庁幹部OBがまさに私と同じ見方をしているのだ。
 この方の説によると、まず7月4日の都議選が第1のポイントとなる。前回圧勝した小池氏率いる都民ファーストはその後分裂を繰り返し、昨年までに6人の都議が都民ファを離党した。このため次の選挙では前回大敗した自民党復活の可能性が高く、また公明党も堅調だという。このため小池都知事は自公の軍門に下る可能性が非常に高いという。

 2番目のポイントは五輪とパラリンピック。もし予定通り開催されれば、小池都知事はこれを「手柄」とし、逆に中止になれば「責任を取る」形でいずれも都知事を辞任する可能性が高いという。というよりも、元々国政に復帰したい小池氏にとって五輪後の都政には何の興味もなく、辞めるとしたらこのタイミングしかないという。

 従って衆院選挙が五輪パラ終了後の9月に行われれば、小池氏が打って出る可能性は非常に高いと見てよい。
 そこで気になるのが、小池都知事がつい最近、自民党本部を訪れ、二階幹事長と会談していることだ。会談の内容は明らかになっていないが、小池氏が衆院選のタイミングと自分が都知事を辞して出馬することについて、二階氏に瀬踏みしたのはほ多分間違いないとみられることだ。

 このようにキーマン2人がいずれも「東京五輪中止」を胸に秘めているとしたら、ある日突然、「五輪中止」のアナウンスがあるということになる。その確率は現時点で50%くらいだろう。(加藤)

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