沖縄でバスケを観よう#1

文化スポーツライターキリンコ

沖縄でバスケを観よう#1

2023フランス開催ラグビーワールドカップのチケット発売が始まったのは、東京オリンピックすら始まっていなかった2021年春だ。時差の関係で販売開始はいつも深夜1時。激戦でなかなかサイトがつながらず、やっと入れた時には目当てのチケットは売り切れの繰り返しで…いやいや、今日書きたいのはラグビーではなく、バスケのワールドカップのことだった。

 

今年の8月に沖縄で開催されるバスケワールドカップのチケットも、そんなラグビーチケットの経験があったから鼻息荒く販売と同時に購入した。ところが残念なことにいまだに売れ残っている。去年のサッカーワールドカップとは比べようもないくらい地味で、同じ日本開催のWBCの陰に隠れてほとんど話題になっていない。でもコロナ禍を経てようやく観戦できる国際大会だ、盛り上がってほしい。沖縄旅行のついででもいいから楽しんでほしい。バスケを全く知らない人でもちょっと応援したくなるストーリーを、どの選手も抱えている。今回は新戦力として期待される選手を紹介したい。

 

河村勇輝選手 21歳

「とんでもない高校生がいる」と早くから話題だった、天賦のバスケセンスの持ち主。それでもトム・ホーバスヘッドコーチから、1年前に「クールな選手は要らない。帰れ」半年前には「シュートしないなら試合には出さない」と喝を入れられ、そのたびに飛躍的に成長する姿を見ると、努力と向上心こそが才能だと実感する。突出した選手は高校や大学からアメリカに行く、というのが今の日本バスケの現状だが、彼は東海大学に進学し、さらに退学してBリーガーになった。国内から世界の舞台を目指してくれる日本バスケの宝だ。

 

テーブス海選手 24歳

父親は町田瑠唯が所属する富士通レッドウェーブの監督(海くんパパと呼ばれている)。アメリカ留学から帰国してそのままBリーグに入団、と聞くとバスケエリート街道まっしぐらのようだけれど、もしそうなら今頃Bリーグにはいなかっただろう。高校で全米2位の成績を収め、強豪の大学に進学したが、チームにフィットせず日本に戻ってきた。Bリーグでも日本代表でも試合をものにしきれないもどかしさがあったが、最終予選ではついに躍動する姿が見られた。諦めず使ってくれたヘッドコーチに感謝!

 

渡邉飛勇選手 24歳

ハワイ育ちで本格的にバスケを始めたのは高校3年だという。日本からの突然のオファーを受けて(母親からの推しメールが効いたそうだ)、リーグを飛び越しいきなり日本代表になった。2メートル7センチという高身長やゴール下で負けないフィジカルの強さを買われての抜擢だ。それでもメンバーで唯一出番のなかった東京五輪、Bリーグデビューをフイにした直前の怪我、3度の手術を含めた1年半のリハビリ期間という挫折の全てを、バスケができる喜びに変えたポジティブ能力がなければ、ワールドカップを目指す現在地にはいなかったはずだ。

 

若きスター選手として輝いてみえる3人。それでも共通するのは、退学などで進路を変更しながらここまでたどり着いたことだ。少なからずあったに違いない迷いも葛藤も不安も、感じさせずに彼らはプレイする。いや、進んできた道を途中で捨てたからこそ、前に進む覚悟が背中を押しているように見える。

 

バスケは瞬時の判断が勝負を分ける。選んだプレイが失点にもつながる。それでも迷って流れを失うよりはずっといい。失敗を恐れて立ち止まりがちな私たちの背中を、勢いよく押してくれる彼らのバスケを楽しんでほしい。

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