「根拠のない自信」という最強ワード
文化スポーツライターキリンコ
「根拠のない自信」という最強ワード
「自信?…なんていうか根拠のない自信」全日本卓球選手権で2連覇した戸上隼輔は、極限の状況でも攻撃的に戦えた原因を聞かれてそう答えた。
根拠のない自信。それはおそらく全ての人にとって一番必要なもの。「準備をしてきたから」「結果を残してきたから」持てる自信は、より準備した人、より結果を残した人を前に崩れてしまう。それに比べて、根拠のない自信は最強だ。
スポーツのルールは見て楽しめるように変化している。昔1ゲーム21点制だった卓球は11点制、前後半戦だったバスケは4Q制に、野球ではタイブレークが考案され、カーリングでは前半のショットの制限が増える。見て楽しいルールはつまり、一番ハラハラする、逆転の可能性がある、選手にとっては一番しんどい展開でもあるだろう。
世界ランクでは差のある張本選手に与えたゲームポイントもデュースも7回。見ていて苦しくなる場面でも戸上選手が続けた攻めは、根拠のない自信に支えられていたのか。10度目の全豪オープン優勝を決めたジョコビッチが意外なほどに泣き崩れたのは、あのジョコビッチでさえ怪我を抱えた状態で根拠のない自信を心の中に守り続けるのは、至難の業だったからか。
根拠のない自信を見せてくれるのは勝者だけではない。グランドスラムで決勝に進みながら敗れた日本の4選手。マラソン日本記録に挑みながら12秒足りなかった新谷選手。悔しい結果にも最後まで戦う輝きが色褪せないのは、自分の戦い方を貫く自信の芯があるからだろう。
自分は生きていく価値がある。自分が選んだこの道は間違っていない。根拠のない自信は、突き詰めればそんなことだと思う。試合の画面から伝わるその最強ワードが、明日を不安がる子どもたちに届けと願う。
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