BLITZ推しでいこう #4

~「人を元気づけられる」から選んだ~ 

車いすラグビーチームBLITZ 荒武優仁(あらたけまさひと)選手

文化スポーツライターキリンコ

BLITZ推しでいこう #4 ~「人を元気づけられる」から選んだ~  車いすラグビーチームBLITZ 
荒武優仁(あらたけまさひと)選手

「大中小、どのレベルでいきますか」コーヒーのサイズを聞くような軽やかな微笑みを浮かべて選手が聞いてくる。車いすラグビーに興味を持ち始めた頃の、体験会での出来事だ。「大で!」と前のめりに答えると、「いいですね」もちろんかなり加減して、それでも激しい音と衝撃を味わえるくらいのタックルを、穏やかな表情のまま体験させてくれたのが荒武優仁選手だった。

 

「自分の演技で人に喜んでもらえる仕事がしたい」子どもの頃から体操競技を続けてきた荒武選手は、そんな思いでサーカスの団員という仕事を選んだそうだ。人を元気づけることで自分も力を得る。そのモチベーションは、車いすラグビー選手になった今も変わらない。

 

公演中の事故で車いす生活となり、精神的にも大きなダメージを受ける中で車いすラグビーと出会った。「こんなことが自分にもできるのか」という驚きと「こんなふうに見ている人を勇気づけることができるんだ」という喜びからこの競技にはまっていったという。

 

「まさか32歳になってもトレーニングを続ける生活をしているとは」と笑うけれど、人間の底知れない可能性を見せてくれる車いすラグビーが、まさに荒武選手の目指す「人を元気づける仕事」そのものだからこそ、続いた競技人生なのだと思う。

 

「BLITZは勝ちへのこだわりが強いチームです」というが、その「勝ち」の意味を聞いていると、少し違う面が見えてくる。「団体スポーツの経験がなかったので、初めはチームワークの本当の意味がわかっていませんでした。特に車いすラグビーは年齢も、機能も、選手になったバックグラウンドも一人ひとり全然違う。その違いを認めつつ、尊敬しつつコミュニケーションをとることでチームプレーが生まれて、それが勝ちにつながるんですよね」

 

勝利はもちろん大事だが、勝ちをつかむ過程で何を感じ、何を伝えるか。2.5点と比較的障害の軽いミドルポインターである彼は、ボールを運びトライを決めることも多いが、相手の動きを止めてハイポインターの道を作る役目も果たす。「自分が求められている役割をすぐに理解する、そのバランスが難しいです」チームプレーにカチッとはまることは、自分の価値を表現することでもあるんだろう。その「はまったチームプレー」こそが荒武選手の目指す、見る者に与えてくれる力となるのだ。そんな試合をもっと、もっと見たいのだが。

 

「試合が少ないので見てもらえる機会がなかなかないんですよね。体験会はいろいろなところでやっているので、たくさんの人に来てもらえたら」と荒武選手。しかたがない、まずは体験会だ。会えばきっと、コーヒーサービスのような軽やかさで、鮮やかなタックルとエネルギーをもらえるはずだ。