BLITZ推しでいこう 

〜車いすラグビーチーム BLITZ〜

#3 ~最後の我慢くらべに勝つために~

文化スポーツライターキリンコ

BLITZ推しでいこう  〜車いすラグビーチーム BLITZ〜 #3 ~最後の我慢くらべに勝つために~ 島川慎一選手

体育館の受付で取材と伝えただけで「島川選手ですね、まだ着いてませんよ」と返された。日本の車いすラグビーが初めてパラリンピックに出場した2004年からずっと代表であり続けている島川慎一選手は、この競技のカリスマ的存在だ。きっと、これまで最も多くの取材を受けてきた車いすラグビー選手なんだろう。

 

48歳という超ベテランでありながら、スピードもパワーも若手を圧倒するプレーや、タックルと同時に相手を威嚇するような迫力の印象が強い。どんな威風をまとって現れるのだろうと少し緊張していたら、いつのまにか静かに到着し、いつのまにか用具を運んで準備を始めていた。練習が始まるとギラっとした形相を見せるのに、休憩時間になるとまたひっそりとオーラを消してしまう。

 

「チームのマネージメントもやってるので大変です。意外と細かいところが気になって、つきつめちゃうんで」と穏やかに笑う島川選手。プレー中の迫力とのギャップに驚く。

 

「本格的なチームを作りたい」と18年前に自らBLITZを立ち上げてから、日本の車いすラグビーが世界トップレベルに上りつめるまでの長い長い道のりの中で、一体どれだけの細やかさと激しさが繰り返されてきたんだろう。

 

「車いすラグビーに出会って変わりましたね。それまではマネジメントなんて考えたこともなかった。人との繋がりも競技から教えられました。海外の友達ができるなんて考えられなかったし、英語だって全然(笑)」

 

日本の車いすラグビーは島川選手と共に進化を続け、今や国際大会で優勝候補に挙げられるまでになった。日本でレベルが高い団体スポーツといえば、WBCで最高の結果を出した野球があるが…

 

「やっぱり日本は強いんだと思いました。拮抗した試合で1点を争う勝負っていうのは、最後まで我慢できるかどうかで決まる。日本の強さは我慢できるところにあるんだなと。自分たちが目指しているのもそこなんで」

 

試合中の殺気だけでなく、厳しいトレーニングも、細やかなマネジメントも全て、勝敗が決まる場面での、最後の我慢のためにある。そう思うと、そのギリギリの場面に立ち会える私たち観客は幸せだ。そして試合後のスイッチをオフにしたような柔らかな笑顔も見たければ、やはりここは、試合会場に足を運ぶしかないだろう。