BLITZ推しでいこう #2
~「大変」のその先が見たい~ 車いすラグビーチームBLITZ 小川仁士選手
文化スポーツライターキリンコ
BLITZ推しでいこう #2 ~「大変」のその先が見たい~
車いすラグビーチームBLITZ 小川仁士選手
「ストップ!ストレート!」チームメイトに激しい声を送る小川仁士選手は、昨年度までチーム最年少だった若手、そして障害の重いローポインターでもある。しかし年齢も性別も背景も全く異なる選手が同じコートに立つ車いすラグビーでは、若さも障害の程度も関係ないらしい。今年はキャプテンとしてBLITZを引っ張る存在だ。声も表情も、そしてブリーチした髪もエネルギッシュな小川選手にチームの強さを聞いた。どんな自信を見せてくれるかと思いきや、返ってきたのは意外な答えだった。
「まだ全然、です」
体格やパワーで劣る日本代表を世界のトップに押し上げている「皆が同じイメージを持てる総合力」が足りないのだという。日本代表や強化指定選手が多いBLITZは一人ひとりのレベルが高い。だからこそ、個で突破しようとしてしまう場面が多いのだそうだ。
さらに今年度のBLITZには、最強のチームメイトが加わった。日本代表のエースでもある池崎選手だ。たしかに、島川ー池崎ー小川ー長谷川 と日本代表だけでラインを組めば、国内では敵なしに見える。
「今年の日本選手権、BLITZは普通にやっても優勝しますよ。だからこそ、新人の選手をどう使うか、どうやって全員がプレータイムを持って一つになれるか、それが大事になると思う」小川選手が目指すのはチームの変化であり、同時に自身の変化でもある。
「今年からウェイトトレーニングを増やして、パワーや瞬発力をつけようとしてます。パラリンピックに向けて、それがいい方向にいくかもしれないけれど、悪い方にいってしまう可能性もある。でも変えてみないとどうなるかわからないから、やるだけです」
中学から始めたモトクロスでは、経験の長い選手には全く敵わなかったそうだ。そのレース中での事故で頸椎を損傷。胸から下と手指に麻痺が残り、車いすラグビーと出会った。成人してから始めた車いすラグビーで、今や世界と戦うアスリートだ。「まさか自分がアスリートになるとは」と笑う小川選手。生活の変化は想像を超えるだろうが、さらにその変化を止めるつもりはないらしい。
「大変な時は、大きく変わる時だって聞いたことがある。だから大変な時こそ、この先大きく変わると信じて貫くって意識してます」
変わることを恐れない、アスリートのそんな姿に私たちは背中を押される。日常での小さな挑戦への一歩を踏み出せたりもする。それまでの人生からの大きすぎる変化を受け入れるどころか、さらに変化を止めない小川選手には、見ているだけで大声を送りたくなる。私たちの声援が選手の変化を加速させられるとしたら、こんなに嬉しいことはない。
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2023.6.29日(THU)〜7.2(SUN)
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