BLITZ推しでいこう #1

~ブーイングを求める勇者たち~ 車いすラグビーチームBLITZ

文化スポーツライターキリンコ

BLITZ推しでいこう #1 ~ブーイングを求める勇者たち~ 
車いすラグビーチームBLITZ

身構えていてもビクッと反応してしまうガツーンという金属音。加速と急停止、ターンを繰り返すタイヤの摩擦音。車いすラグビーの風景にいつも以上に心臓がギュッと掴まれたのは、練習前にチームのトレーナーである理学療法士と言葉を交わしたからだ。

 

「教科書ではできないはずになっていることが体育館では普通にできちゃうんです」「彼らがやってることは、療法士目線で言えばやっちゃいけないことばっかりですよ」

 

理学療法士は病院などでリハビリを行う医療技術者だ。見学をお願いした日の練習がなかなか始まらないのは「障害が重すぎて準備に時間がかかるから」だと笑う彼女の言葉に、車いすラグビー選手たちが生きる世界の振り幅を見せられたような気がした。

 

病院では患者である彼らは日常では支えられる立場であることも多く、そして体育館ではBLITZ =電撃 というチーム名の通り衝撃的に激しく、力強い。

 

その姿から受ける印象は「大変」でもないし、もちろん「かわいそう」なんかでもないし、さらに言えば「すごい」ですらない(いや、実際にはすごいのだが)。

 

もっとこう、視野を急に広げられて全体を見渡す感覚、高いところから見渡したら人間の凄さが際立って、そびえたつ壁もたいして気にならなくなるような爽快さが、車いすラグビーにはある。

 

東京の車いすラグビーチームBLITZは、アテネから5大会連続でパラリンピックに出場した島川慎一選手を中心に2005年に創設した、日本選手権で8度の優勝経験を持つ強豪チームだ。

 

そもそも日本の車いすラグビーは国際大会で常に優勝候補の一角に挙げられている。日本代表や強化指定の経験を持つ選手が多いBLITZは、チーム自体が世界トップのレベルにあるのだ。

 

それでも競技人口の少ない日本では試合そのものが少なく、観戦できる機会がとても少ない。激しいコンタクトプレーも緻密な作戦も、知られなければ伝わりようがない。

 

もっと応援したい、もっと多くの人に知ってほしいとコラムの連載を決め、ではどんな風に応援してほしいかと選手に聞いてみたら、どの選手からも同じ答えが返ってきた。

 

「ブーイングですね」

 

出た。この振り幅よ。

 

連覇をかけて臨んだ昨年の世界選手権で、日本は準決勝で敗れた。銅メダルをかけた3位決定戦は開催国のデンマークとの対戦。ここで選手たちは、とんでもないブーイングを受けたそうだ。

 

「パラスポーツではなくて、スポーツとして見られてたんです」と新キャプテンの小川仁士選手。「ブーイングで感動するっておかしいけど」と長谷川勇基選手。「面白かったですよ」と笑う島川慎一選手。

 

確かに日本のパラスポーツファンは他のスポーツファンより優しい。どちらのチームのいいプレーにも温かく拍手する。それは全ての選手へのリスペクトの表れなのだけれど、車いすラグビーはスポーツだ。いいプレーにドッと歓声をあげ、相手チームには激しいブーイングを浴びせる、そんな本気の応援を選手たちは待っている。

 

次の観戦の機会は6月29日から7月2日にわたって行われるアジア・オセアニアチャンピオンシップ。BLITZではなく日本代表戦になるが、パリパラリンピック出場をかけた重要な大会だ。観客を増やしたい…と願うこちらのはるか上を行く「相手チームにブーイングを」という選手たちの要望に応えられるか、試されているのは私たちだ。

 

※初心者から日本のエースまでが一つになった強いチーム作りを目指す車いすラグビーチームBLITZ。チームの魅力であり強さの秘訣だという、個性が強すぎる選手の推しポイントを、これから数回にわたってお伝えしていきます。

【三井不動産 2023 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ】
2023.6.29日(THU)〜7.2(SUN)

at Tokyo Metropolitan Gymnasium(東京体育館)

入場無料! さらに応援Tシャツ購入で週末のアリーナへ入場可能!