ブーイングができたのは、相手に熱心なファンがたくさんいたから…車いすバスケの元祖サポーター、マスク・ド・グリーンさん

ブーイングができたのは、相手に熱心なファンがたくさんいたから…


車いすバスケの元祖サポーター、マスク・ド・グリーンさん

4年ぶりに声出し応援解禁となった車いすバスケの天皇杯。アリーナ席は早々に完売となり、東京体育館前には開場前から長蛇の列ができた。二日間で5800人という観客は、パラスポーツだけでなくあらゆるスポーツのクラブチーム大会としても際立つ。男子日本代表がパリパラリンピック出場を逃すというショッキングなニュースが1月に届いても、車いすバスケの人気は高まるばかり。まさに「パラスポーツのエース」的な存在だ。

華麗なチェアワーク(車いす操作)でバチバチにやり合うオフェンスとディフェンス、ロングパスに追いつき加速したままシュートを放つ車いすのスピード、決勝戦では残り1分を切ってからの逆転劇と、見応えも十分すぎる大会だったが、現地やBS放送で試合を見た人が一番「気になった」のは、準優勝した埼玉ライオンズを応援席で盛り上げていたマスクマン、マスク・ド・グリーンさんだったのではないだろうか。

応援席で手を挙げればグリーンのメガホンや旗を貸してくれる。前列の観客には選手一人ひとりの名前が書かれた紙を渡す。試合が始まればよく通る声で「レッツゴーライオンズ!」「ディフェンス!」のバスケコールを休むことなく送り、プレイが止まるとBGMに合わせて大きな体で走って踊って観客を煽る。

応援メガホンはチームが貸してくれる、新参にも優しいスタイル

スポーツ観戦ではよくある…と思うかもしれないが、バスケやサッカー、野球と違って「自分もやっていた」という経験者が観客にほぼおらず、そしてどちらのチームに対しても温かい拍手を送りがちなパラスポーツでは、このような熱狂的なサポーターの姿を見ることがまずない。いったいどうして車いすバスケを、埼玉ライオンズをここまで熱く応援するようになったのか。どうしても気になって、話を伺うことにした。

 

車いすバスケ応援の最古参

ーまずは、マスク・ド・グリーン誕生のきっかけから教えていただけますか?

マスク・ド・グリーンさん(以下 グリーン):もう10年以上前ですかね。バスケのbjリーグのさいたまブロンコス(現在はB3)のコールリーダーをやっていまして、その頃からチームカラーのグリーンマスクをかぶってましたね。その試合の前に車いすバスケの試合があったのがきっかけです。

ー車いすバスケ応援の最古参ですね

グリーン:今のさいたまライオンズの選手は、みんな私がサポーターをはじめてから入ってきたメンバーばかりですからね。「このチームにはマスクマンがいるもんだ」って、みんな当たり前に思っているかもしれないです(笑)

ー当時と今とでは車いすバスケの人気もずいぶん違うのでは?

グリーン:それはもう大違い。昔は家族や友達のような関係者がほとんどでしたよ。今のようにアリーナ席を使うこともなく、スタンド席も片側しか使ってませんでしたしね。大企業がスポンサーをする国際大会が開かれるようになって企業関係者を中心にファンが増え始めて、東京パラで一気に広がった感じです。

選手の名前が書かれたのはなんと半紙!書道家のサポーター仲間が書いたそうだ

パラスポーツとして考えたことはない

ーほかのスポーツのサポーターもされているようですが、パラスポーツの応援との違いはありますか?

グリーン:スポーツによって応援のスタイルはいろいろですよね。ハンドボールのような実業団だと応援団がいたり、プロだとヤジやブーイングがあってアマチュアとは全く違いますしね。でもパラスポーツとして…? パラスポーツとして考えたことはないですね。

ーそこがマスク・ド・グリーンさんの魅力なんでしょうね。今回の天皇杯ではフリースローの時にブーイングがありましたよね。バスケの試合で相手チームのフリースローの時に音を鳴らしたりブーイングしたりして邪魔をするのは一般的ですが、国内のパラスポーツ会場でブーイングを見たのは初めてでした。

グリーン:たぶん今回が初めてなんじゃないかと思います。というのも、ブーイングって相手チームにファンがいなかったらできないじゃないですか。マスク・ド・グリーンとして活動していても、しばらくはサポーターがいるのは埼玉ライオンズだけだった。それがだんだんいろいろなチームにファンが増えて、「このチームを応援しよう」という空気が生まれてきました。今回のブーイングは、相手の神奈川VANGUARDSにファンがたくさんいて、接戦で、という中で自然発生的に生まれましたよね。うれしかったですね。

ーマスク・ド・グリーンさんはチームからの信頼も厚いと聞いています。今後チームをこんな風に盛り上げたい、などの意気込みがあれば

グリーン:いやいや、私はあくまでサポーター。応援メガホンを預かって配ったりというお手伝いはしますが、チームとは一定の線を引いています。車いすバスケは試合が少なく、どう応援したらいいかわからない人も多い。もっと皆さんが声を出せるように、これからも体を張って先頭を走っていきますよ。