NBAのスター、ドンチッチの登場に、試合前から会場中が浮き足だっていた。ウォームアップから天井めがけて投げ上げたボールがゴールに収まったりする。NBAにドラフト1位で入り、ベスト5にも選出される正真正銘のスーパースター。日本は開催国の特権を使って、アメリカでもフランスでもなく、ドンチッチのいるスロベニアを招致してNBAファンの喝さいをあびた。会場には77番のユニホームを着たファンも多いが、ただのミーハーにとってもたまらない大物感だ。

試合でも徹底的なマークに合いながらフワッと、ヌルヌルと、ゴリゴリとシュートを入れ続けて37得点。ドンチッチがドンチッチだった40分だったが、会場も最後までドンチッチ劇場の観客だったかというと、そうではない。

ベネズエラのバスケがとにかく楽しすぎた。スロベニアの厚いディフェンスにもスピードとハードワークで対抗し、3ポイントを決めきる。日本戦でこれが見たい、という戦いぶりが前半から観客の心をつかんだ。ハーフタイム前に反対側3ポイントラインからの超ロングブザービーター（終了の笛と同時に入るシュート）が決まった瞬間は、ドンチッチを主役から引きずり下ろすような盛り上がりだった。

ドンチッチがプレイタイムと得点を伸ばしたのも、ベネズエラの奮闘があったから。スーパースターと、ファンを一気に増やすランキング下位国の躍進、これぞW杯だ。