敗戦の失意の持っていきどころ

文化スポーツライターキリンコ

敗戦の失意の持っていきどころ

「次こそ金メダル」そう言って臨んだワールドカップで、オリンピック銀メダルの女子バスケ日本代表は予選リーグで敗退した。1勝4敗。負けた4試合はどれも接戦に持ち込みながら、勝ち方を忘れたかのように最後は突き放されての完敗だった。

 

得意の速いパス回しも出どころを消されて止まり、見たことないほどのターンオーバーを繰り返した。お家芸の3ポイントが決まらないと、表情も動きもかたく見えてくる。何よりショックだったのは終盤で走り負けたこと。今までは第4Qまで接戦に持ち込めば最後には走り勝つと確信できたが、今大会では身体の大きな海外勢の方が動きのキレを保ち続けた。これまで体力が勝っているように見えたのは、勝てるという自信が産んだエネルギーだったのだと思い知った。

 

交代したヘッドコーチの采配、町田選手らオリンピックでの主力を欠いたチーム編成を非難する声も多くあがった。スポーツの成長にはファンの厳しい目が不可欠というが、チームに与えるダメージを思うと暗い気持ちになる。オリンピックで華々しい活躍を見せ、最後にアメリカに敗れることで弱点も大公開することになった日本チームは、各国から研究、対策し尽くされている。同じやり方では勝ち続けられないことは明白で、アメリカに再挑戦するためにも変わらなければなかった。新しい戦略が完成半ばで、厳しい戦いになることはわかっていた。

 

それでも、オリンピックの後もアジアカップ優勝など快進撃を見慣れているファンには、ミスで崩れていく姿は受け入れ辛かった。必死でボールに食らいつく姿はいつもと変わらないのに、勝ちを期待されての負け試合はどうしてスモークフィルターでもかけたように、くすんで見えるのだろう。チームの努力は理解できる、非難するつもりもない、それでも…敗戦のがっかり感の、持って行き場がほしくなる。

 

そんなファンの心情をすくいあげてくれたのは、敗戦後のインタビューだった。自分を責めながら「悔しい」と繰り返す選手たちへのインタビューに、国際大会での悔しい歴史の当事者であるOGたちが加わった。選手を擁護しないOGの、質問というよりは厳しくも温かい叱咤と激励のコメントに応えるように、選手の表情は揺れ動き、生の感情も見えた。敗者へのインタビューはメンタルへの悪影響が心配される面もあるが、泣かせようとせず、守りすぎるでもない理解者たちの発言は、選手にとっても観戦者にとっても前を向くきっかけの一つになったことだろう。

 

「この負けがあったからと思えるような未来を」涙を流しながら言いきった主将の高田選手。「負けた試合は忘れないから」涙をこらえながら話したトヨタアンテロープスの大神ヘッドコーチ。何年か後に日本がアメリカと互角に戦える日が来るとしたら、この敗戦は新しいドラマの幕開け、私たちは貴重な目撃者になる。

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