2025年の世界陸上は
文化スポーツライターキリンコ
2025年の世界陸上は
2025年、世界陸上は東京の夏祭り大イベントとして開催される。ナイトセッションのチケットは5000円、高校生以下は半額だ。終了後には毎晩盛大な花火が打ち上げられるから、花火見物の指定席としてチケットを買う浴衣のカップルが増えそうだ。キッチンカーが所狭しと並び、野球場のビール売り子も出現するので、ビアガーデン代わりに足を運ぶのもいい。
主に予選が行われるデイセッションは自由席。時間により日差しが容赦なく照りつけるエリアがあるので、移動しながらの観戦がおススメだ。もちろん幅跳びを観にバックスタンド、短距離を目指してメインスタンドと動く人が多いだろうが、家族連れなどは、高層スタンドの日陰席でお弁当を広げれば、眺めのいいピクニックも楽しめそうだ。
フィールドとトラックで次々に競技が行われるが、全てを観る必要もない。都心に浮かぶ巨大な宇宙船のような空間で、思い思いに食事や音楽を楽しんでいても、ここぞという場面では派手なプロジェクションマッピングが知らせてくれる。競技中は世界記録や日本記録など、選手が目指す先がVRでくっきり見えて、歓声も熱くなる。
陸上を観たことがない客に、応援のリードをしてくれるのはボランティアだ。ボランティアは競技の方を向かないという美徳らしきルールは、東京オリンピックをきっかけになくなった。無観客の会場で唯一の観客となったボランティア。今回は応援のプロとして手拍子や声かけを先導してくれる。
海外から集まる選手や関係者、観客は東京オリンピックのためにこぞって建てられたホテルや、リモート業務の普及により空いたオフィスを拠点に使う。ウォーミングアップ用のサブトラックが遠いと言われているが、オフシーズンの秩父宮ラグビー場やすぐ近くの2高校グラウンドも使用されることになった。ちなみに秩父宮ラグビー場は有料で見学可能。高校は都内の陸上部員なら無料で見学できる。超人たちのオーラや体の動きを、高校生は間近で目撃するのだ。
陸上オタクや、せっかくだから選手のことを知っておきたいという真面目な人は、公式サイトが必見だ。出場する全ての選手のプロフィール動画が視聴できる。競技の映像だけでなく、選手のドラマが凝縮されている。どうやってここまでたどりついたのか、ここからどこを目指すのか。そのストーリーはどれも濃厚で泣ける。すごいのはこの動画が出場選手だけでなく、各国の代表候補の分まで用意されていたことだ。陸上ファンたちはこのサイトをガイドブックとして各国の代表選考会の配信に手に汗を握り、一年かけて本番への気持ちを高めてきた。
34年ぶりの東京開催となる世界陸上は、数年間続いた自粛モードや無観客となったオリンピックへの無念を吹き飛ばすかのように、華々しく始まろうとしている。
織田裕二が最後のMCを務めた世界陸上オレゴンの総集編を観ながら、そんな妄想をした2022年、夏。
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