スターも実力も揃った3×3に足りないものは…

文化スポーツライターキリンコ

スターも実力も揃った3x3に足りないものは…

ドレッドの長い髪をビビッドに染めた女子バスケ日本代表、馬瓜ステファニー選手のキャラは強烈だ。日本で生まれ育ち英語もネイティブではないが、海外のインタビューに答える様や、音楽に合わせて身体を動かす仕草はどうにもクール。フリータイムにホテルロビーでピアノを練習する意外な一面も魅力的だ。

 

同じく日本代表の山本麻衣選手がインタビューに答える姿は、とてもバスケ選手には見えない。身長163㎝と選手としては小柄で表情もしゃべり方もおっとりと愛らしく、アイドルといっても通用しそうだ。英語の勉強が日課だという真面目さも際立つ。それがひとたびコートに立つと、気持ちの強さが全身からあふれ、相手を気迫で押し退け、ここぞの場面でシュートを決める。

 

日本が世界と対等に戦えるスポーツとして、この二人が代表を務める3×3は大きな可能性を持っている。3ポイントエリア(通常のシュートが1点の3×3では2点シュート)からの精度が高く、それを防ごうとする相手との30㎝を超える「高さ」のミスマッチを「スピード」のミスマッチとしてチャンスに変える。U23のワールドカップではこの二人を含む4人のメンバーでジャイアントキリングを起こし、日本バスケ初の優勝という快挙を成し遂げた。

 

試合時間10分という観戦の手軽さ。DJの音楽と歓声をバックにした華やかさ。目まぐるしく変わる攻防に、格闘技のような当たりの激しさ。コンテンツとして魅力的なこの競技に、スター性を持った二人がいれば日本3×3の未来は明るい…と言いたいところだが、実際には大きな壁が立ちはだかる。日本バスケの人材の少なさだ。二人を含め3×3の日本代表メンバー全員が5人制の代表候補としても活動している。戦術はもちろんボールの大きさすら違う2競技に、同時に適応するのは難しい。

 

先日行われたワールドカップは、日頃から3×3のリーグで活躍する欧州の選手たちとの環境の差が表れる形となった。強豪中国に勝つ実力を見せながら、経験値に勝るヨーロッパ選手に勝ちきれない。バスケ最強国アメリカでさえも、NBA、WNBAの人気が高すぎて3×3にアジャストできずにいる。綿密なコンビネーションが求められる3×3で結果を出すためには、相応の準備期間が必要なのだ。

 

3×3の経験で得たスピードやコンタクトの強さが、5人制バスケ代表としての武器になっているのは、素晴らしいが皮肉でもある。国内リーグ後すぐに5人制代表練習、そこから3×3のW杯に参戦した彼女たちは、敗退の悔しさを胸に今度は5人制のワールドカップへと向かうはずだ。心身の疲労も気になるが、何より身を削って体当たりした3×3の、魅力も実力も伝えることなく終わってしまったことが残念でならない。

 

オリンピックで銀メダルを獲った女子バスケの人気は高まっている。W杯、さらにパリ五輪に向けた強化が最優先なのも理解できる。それでも、バスケ人気を裾野まで広げるためには大局的な戦略が必要だ。国内で3×3が盛り上がるような仕掛けを作ってほしい。高校から実業団、代表とずっとチームメイトでいる、外見もプレイも対照的だが仲の良い、アニメの主人公のような二人。国外代表選手にも見当たらないステとマイのキャラを、日本3×3のアイコンにしないのは、もったいない。

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