マイナースポーツは、次の一手が見逃せない
文化スポーツライターキリンコ
マイナースポーツは、次の一手が見逃せない
カーリングの日本選手権が始まった。世界大会でも放映のないスポーツが多い中、大会はBSで連日放送されている。マイナースポーツながら優遇されているのは、やはりオリンピック効果だろうか。北京オリンピックでは女子が銀メダル。「そだね」で人気になったチームロコソラーレの決勝進出は、カーリング史上初の快挙だ。
それでもイギリスとの北京オリンピック決勝は、格の違いを見せつけられるかのような完敗だった。グランドスラムなど過去の大会戦績を見れば、勝てるチャンスは十分にあったとわかる。けれど必死に置いた石をカツーンカツーンと面白いように弾かれ大差をつけられる試合展開に「やはりパワーがないと」「体格の差が」というお決まりの日本人不利論も多く聞かれた。
果たして、本人たちの想いはどうだっただろう。敗因を精神面と考えているのか、それともパワー? 技術?…日本選手権前のインタビューで藤澤五月選手が語ったのは、そのどれでもなかった。
「オリンピックの決勝という大舞台には、氷に上がる以前に必要な準備があった。日本で初めて決勝に進んだ私たちには、その情報も経験値もなかった」
敗因を情報不足だったとしたうえで、彼女はさらに続けた。
「でも次は違う。今度の決勝の舞台では、その準備ができる。もしそれが私たちのチームでなくても、情報は伝えられる」
マイナースポーツのアスリートならではの強い願いがそこにはある。個人やチームを超えて競技を盛り上げたいという使命感。重圧になるのでは? と思いきや、そうでもない。むしろ目の前の勝敗が全てではない分、思いきりの良さにつながっているようだ。ミスも次のショットへの重要な情報と捉えるカーリングの精神に、しっくり馴染んでいる。周囲からのプレッシャーをうまくかわす、アスリートのスマートな戦術にも見える。
決勝進出の喜びも、決勝で好ゲームができなかった悔しさもひっくるめて、一歩前に進んだ手応えがあるのだろう。日本カーリングの成長に、今まさに立ち会えている醍醐味がたまらない。
そんな藤澤選手のインタビューを聞きながら思い浮かんだのは、先日発表された車いすバスケ香西選手のコメントだ。ドイツのブンデスリーガで主力選手として活躍する彼は、来シーズンの契約を断り日本でプレイすることを決めたのだ。
「自分の経験を日本の車いすバスケのレベルアップにつなげたい」
東京パラリンピックでこちらも初の銀メダルを手にしたプレイと同じくらい、思いきりのいい決断だった。「オリパラでの人気だけでは終わらせない」静かな決意が、マイナースポーツに心血を注ぐ彼らから伝わってくる。
香西選手の所属するランディルは大逆転でプレイオフを制し、ブンデスリーガ優勝を決めた。日本選手権でのロコソラーレはどうだろう? 五輪も世界選手権も終わった異例のタイミングでの日本選手権。代表選考のヒリヒリ感はないが、国内だからこその負けられない思いはあるだろう。それでも今は結果より、沸き立つようなチャレンジショットで日本カーリングの次の一手を見せてくれるのを、楽しみにしている。
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