UPSET ALERTを鳴らせ

文化スポーツライターキリンコ

UPSET ALERTを鳴らせ

サッカーがワールドカップ出場を逃したドーハの悲劇は1993年。今から30年前だ。1995年にはラグビーの日本代表がニュージーランドにW杯史上最悪の結果と言われる145対17の歴史的な大敗を喫した。

 

サッカーが弱い日本も、ラグビーが弱い日本も、今はもういない。「ジョホールバルの歓喜」や「ブライトンの奇跡」。いくつもの歓喜やら奇跡やらを繰り返して日本のスポーツは前に進み、気がつけば強豪国のポジションを掴んでいた。

 

その中で足踏みが続き、国際大会での一勝が遠いのがバスケだ。明日から始まる自国開催W杯。予選リーグの相手は現時点でのパワーランキング2位のドイツ、12位のフィンランド、そして世界ランキング3位のオーストラリア。36位の日本にとっては、まさに「奇跡」を起こすしか勝つ手がない。

 

「沖縄の奇跡」が見たくて、北谷のコンドミニアムに前乗りし、オリオンビールを飲みながら開戦前夜を迎えている。空港にも街にもワールドカップの広告は探せばあるという程度で、お世辞にも大会一色とは言い難い。

 

それでも奇跡ってきっと、こんなふうに機運が高まらないなかで起こる。だからこそ「奇跡」なのだ。

 

選手の応援Tシャツを注文したら、届いた次の日に日本代表からの落選が発表された。1年前に取ったチケットはベンチ裏のはずだったが、「中継席を誤って販売してしまった」とかで開幕2週間前にするりと2階の端に入れ替わった。

 

そんなこんなの運の取りこぼしも、奇跡の目撃者になるための準備だとしたら安いものだ。NBAの八村選手は辞退し、渡邊雄太選手は大会前の怪我で万全とは言えない中、代表選考に残ったのは、Bリーグですら控えに回ることの多かった無名の選手たち。奇跡のお膳立てとしては十分過ぎるくらい、下向きの矢印が揃った。

 

大番狂わせがおきそうになるとSNSで鳴り響くUPSET ALERT。赤いサイレンを光らせるなら、今だ。