菅首相が産經新聞の単独インタビューに対し

加藤清隆の『俺に喋らせろ!』

菅首相が産經新聞の単独インタビューに対し

 菅首相が産經新聞の単独インタビューに対し、改めて憲法改正を目指す考えを示した上で、憲法9条への自衛隊明記に関し「もちろんだ。(自衛隊は)かつてと全く違い、今では多くの国民に理解を示してもらえるようになった。自衛隊の位置付けはしっかりすべきだ」と述べた。秋までに行われる次期衆院選の党公約に憲法改正を掲げることは「当然だ。柱となるいくつかの重要政策の中に入れるつもりだ」と明言。衆院選を控え、改正に向け党総裁としてのより一層の指導力が求められる。

 これまで、余り憲法改正に積極的と見られなかった菅首相が前向きになったことは大変いいことだ。コロナ禍で余裕ができたとは到底思えないが、先の日米首脳会談の成果が首相としての自覚を蘇らせたのではないか。いずれにしてもいいことだ。ぜひその姿勢で取り組んでいってもらいたい。

 ただ憲法改正問題を審議する衆院憲法審査会の現状は惨憺たるものだ。今国会2度目となる会合をようやく開催。参院では4月28日、今国会初めての会合が開かれた。いずれの審査会でも、憲法改正国民投票法改正案の採決には至らなかった。

 念のために申し上げると、衆参両院憲法審査会では本丸である憲法改正の条文の審議どころか、憲法改正の最終手続きでえある国民投票法についての審議ですら、この体たらく。同改正案は平成30年6月に審査会へ提出されてから間もなく3年になる。8国会にわたり継続審議とされているのは、極めて異常と言わざるを得ない。

 同案は(1)個人情報の保護(2)駅構内やショッピングセンターでの共通投票所の設置(3)災害や悪天候などを理由とする期日前投票の弾力的運用(4)洋上投票の拡大ーなど7項目からなり、既に公職選挙法で実施されている事項を内容とする。その利便性は一見して明白であり、国民投票法にも適用されるべきは当然だ。

 立憲民主党と共産党は「慎重審議」を唱えているが、一体いつまで審議を続ければ「慎重審議」が解けるのか。産經新聞とFNN の合同世論調査によると、53・3%が「今国会で採決すべき」と回答。また憲法改正に対する賛成が52・6%で反対の39・9%を上回っている。

 国民が今求めているのは、国民投票法の採決の可否や時期という手続きの問題ではないことは言うまでもない。各党がこの憲法とどう向き合おうとしているかという実質的な面である、と駒沢大名誉教授の西修氏は指摘する。

 自民党は平成30年3月に(1)自衛隊の明記(2)国家緊急事態条項の新設(3)参院の合区解消と地方公共団体の再編(4)教育環境の整備ーを抱合する「たたき台素案」を発表した。各党はこれらを改正原案としてまとめ、憲法審査会に提出する必要がある。

 憲法審査会は、政局を絡めた政党のためのものではない。主権を有する国民の目に見える形で、真摯に議論を重ね、国民に憲法改正案原案を提示する場である。時代は大きく変容している。74年前に施行された憲法に新たな息吹を吹き込む。これこそが今、我々国民に求められている、と西修氏。

 一方、櫻井よしこ氏は「日本は内外共に戦後最大の危機の中にある。内においては新型コロナウイルスに抗するワクチン供給・接種は動き始めたとはいえ、先進7ヵ国で最低の状況だ。ワクチン製造という国家戦略を欠いてきた日本国の脆弱性は際立つ。加えて憲法に緊急事態条項がないため、政府には命令権も強制力もない。コロナ対策で国家機能を全く発揮できない」と指摘している。


 要するに政府のコロナ対策とはひたすら国民に自粛をお願いするだけで、政府自らが能動的に対策を押し進める体制になっていない。憲法に緊急事態条項がないことがその全ての原因となっている。

 櫻井氏はまた「外においては中国の膨張と脅威に直面している。米インド太平洋軍司令官、デービッドソン氏(当時)は中国の台湾侵攻は今後6年以内と警告したが、米大統領選と台湾総統選が重なる2024年との指摘もあり、事態は切迫している」と強調。

 4月の日米首脳会談はこうした状況下で開かれ、菅首相は「日本は自らの防衛力を強化する」、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調する」と誓った。また米有力シンクタンクCSIS出の講演でも首相は中国を念頭に主権、民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値で譲歩はしないとし、「日米同盟を更なる高みに引き上げて行く」と明言した。

 首相の一連の制約は重い意味を持つ。そしてその実行が求められている。首相の決意も制約も日本の戦後体制を根本から代えることなしには実行できない。憲法9条の改正をはじめ、軍事を回避してきた戦後体制から脱却し、強い意志を持つ自立国になることなしには全てが空手形になる。民主主義か専制独裁か、米中せめぎ合いの舞台で、首相は、日本国はこえを好機ととらえ生まれ変わると公約したに等しい。容易ではないが、菅首相はその時、国益を実現した大宰相だったと評価されるのか、それとも国家観を欠いた実務者だったと論評されるのか。実行してこそ「大宰相」への道が開ける、と櫻井氏。(加藤)

 菅首相が産經新聞の単独インタビューに対し”へ2件のコメント

  1. こまった より:

    憲法に「国を守るのは駄目だ」と書かれているんだろうか。違憲だなんて言うのは、他国民だとしか思えない。違憲は外国人生活保護と私学助成金。

  2. Teawhoney より:

    CSISの世界に民主主義があるのかどうかは疑問ですが、専制独裁だけは避けなければいけないと思います。

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