そもそも小泉らは日本の発電状況をどう認識しているのか?

加藤清隆の『俺に喋らせろ!』

最近話題になった政治家の集まりに3月11日、憲政記念館で開かれた「脱原発」の集会がある。何と、小泉純一郎、菅直人、鳩山由紀夫の3人の総理経験者が顔を揃えたのだ。鳩山氏は小泉氏に対し、「脱原発新党」を作り、党首になるよう求め、自身も「参上したい」。菅氏も「結党記者会見みたいだ」。3月11日と言えば、東日本大震災から丁度10年目のその日、総理経験者はなぜこんなにはしゃいだのか?

 3人の総理経験者のうち特に注目されたのが小泉氏。「現職の時、『原発は必要だ』と言っていたことは間違いだった。過ちは改むるに憚ることなかれ」といけしゃあしゃあと語ったそうだが、それでは「現職総理の時代、いかに自分に問題意識も定見もなかったことを告白しているようで痛々しい」と評したのは産経抄だ。

 菅氏にいたっては菅政権がめざす2050年の温室効果ガスの排出ゼロについて「化石燃料を使わないやり方でも、十分に(脱原発を)実現できる」と主張したそうだが、その方法が全国の農地に太陽光のパネルを敷き詰めれば達成可能というのだから呆れる。

 宮崎正弘氏は高田純氏の著作の書評で「福島原発の低線量放射能では10年間1人の犠牲者も出ていない。一方で中国の核ミサイルが東京を直撃したら、380万人もの犠牲者が出る。日本の平和利用に限定した原発を封じ込め、そそっかしい日本人に「脱原発」運動をやらせている。その中には小泉純一郎ら元首相もいる。中国の洗脳工作がまんまと成功した訳だ。北京の高笑いが聞こえないか」と書いている。

 そもそも小泉らは日本の発電状況をどう認識しているのか?
 震災前に50基以上あった原発は33基まで減少。しかも厳しい安全対策で採算が取れないため、多くの電力界社が廃炉を決めた。その後電力業界全体で5兆円以上もの安全対策費が投じられたが、再稼働に至った原発は今のところわずか9基にとどまっている。

 震災前の2010年度に全電源の4分の1を占めていた原発は、20年度に6%まで低下。逆に太陽光や風力などの再生可能エネルギーは18%まで上昇した。しかし再生エネの最大の弱点は不安定なこと。電力を安定的に供給するにはLNGと石炭、石油の化石燃料が不可欠で、同燃料比率は何と76%にまで上昇。震災前より10ポイント以上も増えたことになる。

 今年1月には日本列島を厳しし寒波が襲い、全国的に電力が逼迫した。天候悪化で太陽光や風力発電が機能せず、各社ともLNG不足に陥る中で、特に原発停止中の関西電力と四国電力が深刻な電力不足直面した。各地からの緊急融通で何とかしのいだが、やはり温室効果ガスを排出せず、安定電源としての原発の重要性が再認識された。

 今夏には政府のエネルギー基本計画が改定されるが、鍵を握るのが原発比率。再生エネ比率を上げても原発比率を下げれば、火力比率は下がらない。再生エネと原発の非化石燃料電源の比率を同時に高めることが求められる。

 エネ基本計画改定に向けて、経済界からは原発の再活用を求める声が高まっている。再生エネ拡大に伴い、日本の産業用電力料金は震災前より3割も値上がりしている。かつて世界第2位を誇っていたアルミ生産は電力料金値上げでついに国内から工場がなくなってしまった。このまま電力料金が上がり続ければ、次は鉄鋼や自動車産業が日本からいなくなるだろう。トヨタの豊田昭夫社長の悲鳴はこうした事情が背景にある。

 関経連は原発について「依存度を可能な限り低減する」として政府方針の見直しを提言。さらに原発の運転期間延長や小型のモジュール炉という次世代型小型炉の推進も求めている。

 菅総理が掲げる2050年の温室効果ガスの排出を実質ゼロにするためにも原発の活用は不可欠。小泉氏らはこのような事情を分かった上で「脱原発」などという無責任なことを左翼勢力と叫んでいるのではないか?(了)

そもそも小泉らは日本の発電状況をどう認識しているのか?”へ2件のコメント

  1. keiko i より:

    「脱原発新党」??●抜け元総理の空騒ぎにすぎないw 家族親族はさぞや恥ずかしい思いをされているであろう。10年前に目の前で起こった大惨事に対する思い、反省と悔恨の念はなにのでしょう。頼むから現役世代の邪魔はしないでほしい。
    国際社会のレールに乗せられて「炭素ゼロ社会」なんて軽々しく宣言されて、仕方なく企業現場もいかに対応していくか、生き残りをかけて努力をされているはず。政府も自国の企業と国民を守るために、他国ともしっかり駆け引きをして渡り合ってほしい。

  2. Teawhoney より:

    加藤先生、日本のエネルギーの現状を解説してくださってありがとうございます。
    国防とエネルギーと食料は、生きていくのに最低限必要なこと。
    誰にも相手にされなくなったお年寄りが集まって、見栄と私利私欲のために日本をつぶすつもりでしょうか。
    この三人は、今更大きな顔をする前に、在職中に行った国益の毀損を棚卸しして、少なくとも国民の許しを請うべきです。
    わたしたち国民を犠牲にするような人に、コロッと騙されて外国の草刈り場にされるような愚かな国民ではないと声を大にして言いたいです!

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