BLITZ推しでいこう #10

〜コートの上に、自分の全てを出す〜

車いすラグビーチームBLITZ 池崎大輔(いけざきだいすけ)選手

文化スポーツライターキリンコ

BLITZ推しでいこう #10 〜コートの上に、自分の全てを出す〜 車いすラグビーチームBLITZ  池崎大輔(いけざきだいすけ)選手

「勝ちへの執念が凄まじくて」「気を失うほど走るから」ベテランの選手を評したトレーナーの言葉を聞いて、2021年の夏を思い出した。金メダルを獲ると決めてのぞんだ東京パラリンピックを、日本は3位で終えた。3位決定戦での鬼気迫るベテラン勢の姿は今も心に強烈な印象を残しているが、その後選手たちはどんなふうに顔を上げ、また次の目標を見定めていったんだろう。

 

日本が世界選手権で初優勝した時のMVPでもあり、日本のエースとして長年活躍する池崎選手は、ラジオのパーソナリティや大会の解説での饒舌な語りで車いすラグビーを盛り上げている。けれどその一流のプレイを国内の大会で観る機会がしばらくないことが気になっていた。

 

今年度BLITZに加入すると聞いたのは、取材が決まった後のことだ。

 

「東京パラが終わって、自分自身を見つめ直す必要があった。何が足りなかったのか、自分の強み弱みを一回考えたくて。自分のことでいっぱいいっぱいで、クラブチームのことを考える余裕はなかったっていうのが正直なところですね」率直なコメントに、こちらの言葉が詰まる。

 

「それでもここまで育ててもらった車いすラグビーをもっと広めたいという思いでラジオや解説もやらせてもらって。外から見ると、こんなに幸せな環境でやれていたんだと感じたし、車いすラグビーってすごくおもしろいって改めて思いました。同時に、やっぱりまだまだ知名度が低いなって。これはどんなにいい会場でいい広報してもダメで。やっぱり選手が個性を出して、魅力を出して、いいプレイをして、結果を出すしかないんですよね」

 

世界的な車いすラグビー選手である池崎選手と同時に今年度BLITZに加入したのは、新人の古井選手、そして壮年で挑戦する山村選手だ。

 

「知識の少ないメンバーにはできるだけ経験して車いすラグビーの楽しさを感じてもらい、自分の持っているものを伝えていきたい。BLITZにはいい若手も育っているので、これからの日本代表になれるように。その為には全力で取り組む姿を見せるのも、一つの教えだと思ってます」

 

その言葉通り、BLITZでの池崎選手の存在感は半端ない。プレイ中も若い選手に声をかけて位置どりを指示したかと思うと、全速力でコートを駆け抜けて激しく当たり、振り向きざまに大声を上げてチームを盛り上げる。

 

「今年BLITZに入ったのは、とにかく勝ちにこだわる志の高さを感じたから。このチームでまだまだ自分も成長できると思います」

 

若手の育成と日本代表としての進化をコートの上で同時にやってみせる池崎選手。その姿は車いすラグビーという一つの競技をギュッと濃縮させたように激しくて熱い。一般のスポーツではなかなか考えられないが、垣根や常識を取っ払って猛進する車いすラグビーでは、それがとても自然なことに見えてくるから不思議だ。

 

「日本人はシャイだし、大声を出しにくいってわかるんですけどね、それでも倒したり起き上がったりしたら、思わず歓声を上げて、派手にリアクションをしてもらいたいですね。見る人もみんなで一緒になって試合を盛り上げたい、自分たちのプレイがそのきっかけになれたら」と池崎選手。

 

倒して進み、倒されても起き上がってまた進むこのとんでもない競技。新人の育成から世界トップレベルまでを行き来する選手たち。そんな車いすラグビーの応援に、生ぬるさは似合わない。日常など取っ払った歓声で、選手たちを驚かせたい。近づく大会に、気分が盛り上がってきた。