もしトラ?ニトログリセリンに例えられるトランプのトリセツ
最近、メディアで「もしトラ」という言葉が散見するようになりました。「もしトランプが再選されたら」という意味のようです。実に間抜けな表現だと思います。「日本にとってはバイデン民主党の方がいい、トランプが再選されたら日本は大変なことになる」という、米国国務省の出先機関と化した外務省と米国民主党に支配された自民党と官邸の意識を反映しているようで「情けない」の一言に尽きます。
先日私がコーディネートしている令和専攻塾で島田洋一福井県立大学名誉教授に講義して頂きましたが、島田教授はトランプをニトログリセリンに例えていました。ニトログリセリンは狭心症には効果的だが、取り扱いを間違えれば劇薬だという二面性があるというわけです。
それは確かにそうで、トランプなら日本の自主性を尊重してくれるし、北朝鮮の拉致問題も理解を示してくれました。一方で、日本は日米安全保障条約にただ乗りしていると決めつけたり、単純で猪突猛進な部分もあります。安倍元首相は、いい所は大いに受け入れながら、困る部分は議会と協力して抑えたり、巧みに対応を変えながら対処していたとのことです。
最近では、日本製鉄がアメリカの象徴的企業であるUSスチールを買収するというニュースが流れ、トランプが「ひどい話だ。自分が大統領に再選されたらこの買収を阻止してアメリカの雇用を守る」と発言する一幕がありました。トランプらしいと言えばらしい発言です。
確かに、1901年創業のUS スチールはアメリカを象徴する企業であり、そのような企業が外国企業に買収されるとなれば、感情的な反発が噴出するのは予想できます。かつて日本のバブル経済期に三菱地所がロックフェラーセンターを買収して物議を醸したことが髣髴とされます。日本人にとっても、日本製鉄やトヨタが外国企業に買収されたら胸がざわめくことでしょう。外国の象徴的な企業を買収する際はよほど注意して根回しをしっかりしないと危険です。
今回は全米鉄鋼労働組合(USW)も反対の意見を表明しました。製鉄は国家戦略上極めて重要であり、安全保障上の問題もあることから、たとえ相手が日本企業でも外国企業に売却するのはけしからんというわけです。あまり細かい検証はしておらず、頭に血が上って感情論が先行している感じです。実は日本製鉄の買収の前に、米企業で鉄鋼生産高世界22位のクリーブランド・クリフス社が買収提案をしており、これをUSスチールの取締役会は検討の末拒否しているのですが、USWはクリーブランド・クリフス社の提案を受けいれるべきだと提案しています。米国企業による買収なら容認できるというわけです。(USスチール社は27位)
USWはバイデン政権の支持も受けたと公表しており、現役の政治家たちも次々と反対声明を出しています。しかし、いずれも感情が先行しています。この反発に対して日本製鉄の森高弘副社長は「反発は想定内」としながらも、「両国にとっても非常にメリットがある案件。政治の思惑だけでブロックすることはできない」と発言したとのことです。(テレ朝ニュース)
ここで重要なのは、この問題を日本製鉄任せにせず、しっかりと援護射撃できる政治家が日本側にいるかどうかです。このような場面では挑発的な発言は控えながら、丁寧に説明する高度なスキルが必要になります。たとえば、次のように発言できる政治家が一人でもいてくれたら助かります。逆に言えば、一人もいないようでは国家として情けなさすぎます。
「もちろん、伝統的で象徴的な企業が外国企業に買収されると聞けば、不安に感じ、懸念が生じるのは無理のないことです。(相手への理解を示す)しかし、やや誤解が生じているようです。USスチールの取締役会が認めているように、これは非常に有益な、Win & Winのディールです。
現在、世界の鉄鋼生産高のトップ10位に中国企業が5社も入っており、日本製鉄が4位、USスチールが27位です。このままでは、米国の製鉄業界は消滅の危機に瀕し、中国企業に席巻され、米国の安全保障に重大な懸念を生じさせます。日本製鉄と合併すれば、社名も残り、雇用は保証され、労働組合との合意も100%保証され、技術力と競争力を向上させながら日米共同で中国の脅威に対抗することができます。日本製鉄は米国に輸出していないので、米国の本社を閉じる必要もなく、マーケットシェアも向上すれこそ、悪影響を受けることはありません。
たとえば、Post Gazette紙が指摘するように、大切なことは日本製鉄が米国の産業基盤を強化することになるかどうか、テーブルに乗っている他の代替案は本当に良いものなのかを冷静に検証することです(米国のメディアを引用する)。代替的な案とはCleveland-Cliffs社による買収ですが、クリーブランドはピッツバーグから135マイル(約220キロメートル)しか離れておらず、そのような近い距離に本部を2つ置くのは無意味ですから、もしUSスチールとCleveland-Cliffsが一体化すれば、一つの本社の閉鎖は避けられません。それはピッツバーグでの雇用を減らすことに帰結します。また両社の間には製品の重複が存在しますから、両社が一体化すれば、大量の雇用削減は避けられません。しかし、日本製鉄との一体化なら、そのような心配は一切無用で、USスチールはそのままの形で競争力を高めることができるのです。USスチールの取締役会が日本製鉄の提案を承認したのは極めて合理的な判断だと言えるでしょう」
このようなことを日本製鉄の社長だけに言わせるのではなく、日本の政治家が丁寧な言葉で発信すること、発信できることが重要なのです。安倍元首相亡き今、それができる政治家がいるでしょうか?英語力があればいいというものではありませんが、英語が堪能な林芳正氏や茂木敏充氏はなぜ沈黙しているのでしょうか?安倍元総理が自らの後継者と信頼していたという萩生田光一氏はどうでしょうか?島田洋一教授によると、「米国の政治家やシンクタンクにもっとネットワークを広げた方がいい」とアドバイスすると「英語が苦手だから」と答えたそうです。
このように無能な政治家揃いだと、せっかくトランプが大統領に復帰しても、それを千載一遇のチャンスとして活かせず、リスクばかりを増やしてしまう恐れがあります。実に残念であり、深刻なことです。
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