民主主義は民主主義によって瓦解する！ 放縦を極めるつばさの党に拱手する警視庁
東京１５区補選が終わった。事前の予想通り、立憲民主党の酒井菜摘氏がかなりの大差をつけて勝利した。島根１区も立憲民主党の亀井亜紀子氏が勝利し、自民党が推した錦織功政氏は及ばず敗れた。保守王国の相次ぐ敗北に岸田降ろしは必定かと思いきや、永田町は思ったよりも静かで、岸田政権はまだ続きそうなもようだ。
それにしてもつばさの党の根本良輔氏ら一党の乱暴狼藉ぶりは酷かった。
４月２０日午後２時２０分過ぎ、東京都江東区豊洲の商業施設「ららぽーと豊洲」前で、金澤結衣氏の街頭演説が始まった。X（旧ツイッター）で告知されていたので、それを見に行った。吉村洋文大阪府知事が来るという。週末の豊洲は家族連れの姿が目立った。１００人を超す人が街宣車を見つめていた。街宣車が到着してから１５分が経っただろうか。吉村氏が金澤氏と一緒に街宣車を降り、聴衆１人１人と握手をしていたころ、運動員の誰かが「つばさの党が来る！」と叫んだ。ほどなくして「演説して。演説して」という声がした。
音喜多駿衆院議員が急遽、街宣車に登って、壇上から声を張り上げた。 「金澤さんは１位の候補を猛追中です。皆さんの一票で結果が変わる大激戦になっています」
そのとき、１人の若い男が街宣車の前で紙をとりだし、音喜多氏の視界に入るように掲げた。つばさの党の根本良輔候補だ。「売国奴！ こっち向け！ 税金ドロボー」
そのとき、１人の中年の男が根本氏に走り寄って「こっち、こっち」と言った。これがつばさの党の代表、黒川敦彦氏だった。
すでに金澤氏と吉村府知事は、練り歩きを始めていた。すでに豊洲公園に入って、家族連れらと握手をしている２人に向かって、根本氏は「逃げんのかよ！」と大音声を上げながら追いすがる。それをスタッフを務める区議、市議らがブロックしていた。そばを歩いていた子供に「大声出すなよ。大人として恥ずかしくないのかよ」とたしなめられる始末。
その後、根本氏らつばさの党の数人は、立憲民主党の酒井菜摘氏の街宣車にも凸撃していた。
警視庁城東署は１６日、ＪＲ亀戸駅前で、無所属で出馬した乙武洋匡氏の演説にかぶせるように約５０分、拡声器を使って演説をするなどした行為を「選挙の自由妨害」に当たるとして、つばさの党の黒川代表や根本候補ら３人に警告を出した。
だが、彼らは妨害をやめないばかりか、城東署に赴き、大声でわめいたり、書類を投げつけたりとやりたい放題、これでも彼らは逮捕されることもなく、選挙期間中はやりたい放題だった。
酒井候補の応援に入った蓮舫氏は２１日、街宣車をつばさの党関係者らに追いかけ回されたとして、Ｘで「警察署前で車を止め、スタッフが警察署に駆け込み相談をしている間に車の窓を叩かれ暴言を浴びせられ、動画を撮られていました」と経緯を投稿し「警察の対応が遅くて、怖かったです」と警察を批判した。
だが、これまで何度も述べているが、２０１９年参院選の際、札幌市で安倍晋三首相（当時）に「アベヤメロ」と繰り返した叫んだ男性ら２人が北海道警に排除されたのを裁判闘争をして札幌地裁（広瀬孝裁判長）で８８万円の賠償命令を勝ち取ったとして、誇らしげに「言論の自由が守られた」と彼らの裁判闘争を支持し、「ヤジは言論の自由だ」と言っていたのは、ほかでもない立憲民主党である。
蓮舫氏が蓮舫氏なら警視庁も酷い。これまでの判例では「アベヤメロ」と繰り返し叫んだ男性を排除したのは、合法だとされている。「税金泥棒」と叫んだ女性を排斥したのは、違法だとして、札幌高裁では５５万円の賠償命令を命じている。
今回のつばさの党の行為は、選挙活動を仮装していたとしても、明らかにやり過ぎだ。「アベヤメロ」と繰り返し叫んだ男性を排除した北海道警の行為が合法だと、札幌高裁が判示したのだから、緒方禎己警視総監が腹を括れば、彼らを逮捕できたはずだ。
左派政党も自らの不明を少しは恥じただろう。机上で考える民主主義など、悪意の前には脆いものだ。つばさの党は法の抜け穴を利用して、民主主義に挑んだ。実際に各政党ともＸに街宣予定を告知することを控えた。つばさの党の乱暴狼藉の影響を最も受けたのは、小池百合子・東京都知事だろう。他政党には全く護衛がつかないのに、小池知事にはＳＰをはじめ、１００人ほどの私服警察官が彼女らを守った。この不公平を江東区民はどう受け止めただろうか。吉村氏は大阪府知事だが、護衛はなかった。ＳＰのような格好をした男性が、金澤氏をガードしていたが、陣営関係者によると、ＳＰを模した日本維新の会の関係者だったのだという。小池氏が立候補を要請し、自ら江東区民に電話をかけてまで熱烈に応援した乙武氏は５位で落選し、小池氏の「常勝神話」もあっけなく崩れた。
つばさの党は６月の東京都知事選にも候補者を立てるという。法改正に向けた国会の動きは、まだない。
