台風の目になるか? 石丸伸二氏の人気が読めない

 16日、東京都知事選に出馬している蓮舫氏(56)が東京都町田市のJR町田駅前で街頭演説をした。2日のJR有楽町駅前、9日のJR阿佐ヶ谷駅前に次いで3回目の告示前街頭演説だ。この場で蓮舫氏は「公約を蓮舫ビジョンとして18日に発表したい」と述べた。小池百合子・東京都知事(71)が既に「18日に公約を発表する」と公言しており、どこまでも小池氏への対抗色を前面に押し出したいようだ。
 12日に小池氏が立候補を表明したのは、「蓮舫氏の人気が思ったほどではなく、『これならいける』と陣営が踏んだようだ」(自民党関係者)自民党の萩生田光一・東京都連会長と小池氏の蜜月はつとに知られるところであり、一説には小池氏が、蓮舫氏が勝つ可能性が高いとの情勢分析が出て、都知事選に迷いが生じ、国政に転身した際は、橋下徹氏(54)を自民党が都知事候補に推薦するのではないか、との怪情報まで飛んだ。
 また、最近言われているのは、蓮舫氏の人気が思ったほどではない、と主に自民党関係者を中心に「楽観論」が出ていることだ。
 15日、東京都立川市で開かれた市民集会では、蓮舫氏は欠席したものの、文部科学省元事務次官の前川喜平氏(69)が登壇し、1967(昭和42)年の美濃部亮吉都政誕生の再来を訴えた。前川氏は蓮舫氏が当選した場合、「朝鮮学校の無償化をやる」と明言し「朝鮮学校に対して補助金を、日本の私立学校と同じく、きちんと助成することを実現したい」と述べたそうだ。
 集会の終盤には市民団体がそれぞれ壇上に上がり、米軍横田基地(福生市など)の撤去や、朝鮮学校に対する補助金凍結の解除、有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)対策を求める横断幕を掲げ、蓮舫氏支援を誓った。
 だが、こうした動きに眉をしかめる立憲民主党関係者がいるのも事実だ。「米軍横田基地の撤去などという公約を本当にするのであれば、立憲民主党の矩を完全に超えているし、蓮舫氏は共産党の影響を強く受け過ぎている」とある立憲民主党関係者は声を潜めた。
 立憲共産党と揶揄される立憲民主党と共産党との選挙協力は、立憲民主党側では手塚仁雄衆院議員が強く主張してきた。立憲民主党の強力な支持母体である連合は以前から、この手塚氏らの共産党に擦り寄った動きに不快感を示しており、今回の都知事選で、芳野友子・連合会長は「共産党と連合は考え方が全く違う。連携していくことは難しい」と述べ、小池氏支持を明確にした。静岡県知事選では野党候補を支援した国民民主党も、連合と平仄を合わせるように、小池氏支持を鮮明にした。
 先の自民党関係者は「思ったより蓮舫氏に風は吹いていないようです。あまりに政策が先鋭的に過ぎる。都内の有権者も『立憲民主党はともかく、共産党は支持できない』と話す人が非常に多い」と「立憲共産党」の連携は、むしろ蓮舫氏にとっては逆風になる、との見方を示した。
 ただ、台風の目になるかもしれない、と各陣営が神経質になっている候補がいる。広島県の安芸高田市長だった石丸伸二氏(41)だ。
 15日、渋谷で街頭演説を行った石丸氏を聴衆数百人が囲んだ。
 「恥を知れ」と議会で居眠りをする市議をしかりつける言動は注目を集め、安芸高田市の公式チャンネルは約26・8万人が登録、石丸氏のX(旧ツイッター)のフォロワーも約40万人に達する。
 東京15区補選で注目を集めた日本保守党の飯山陽氏もSNSの人気が高い候補だったが、飯山氏の場合は保守層に主張がかなり受け入れられ、政策も明確だった。だが、石丸氏の場合は「東京解体」を訴えたり、「読んだ漫画は2万冊」と述べるアニメオタクなキャラクターが注目されるなど、これが票に結びつくのかは、甚だ不透明だ。
 石丸氏は当初、維新に接近したものの、政策協議が不調に終わり、維新は次に音喜多駿氏を擁立しようとした経緯がある。その維新の関係者も「石丸氏が意外な台風の目になる可能性はある。ただ、票が読めない。聴衆も東京都以外から来て、応援をしていた人がかなりいたようだ」と述べ、第三極となって、小池VS蓮舫の「女の戦い」に割って入ってくることができるかどうかは分からない。
 ただ、「維新が独自候補の擁立を見送ったことで、有利なのは小池さん」と自民関係者も維新関係者も断言する。小池百合子・東京都知事の3選は「鉄板」なのだろうか。

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