予想される静岡県民の今後4年間の苦難の道

静岡県知事選が終わった。川勝平太という史上まれに見る県政を混乱させた人物の後任を選ぶ選挙だから、本来は保守系の大村慎一氏が有利なはずなのだが、立憲民主党、国民民主党が推薦する鈴木康友氏が勝利した。スズキの鈴木修相談役は、これで川勝平太氏、鈴木康友氏と2代続けて自らが支援した候補を知事に押し上げたことになり、齢94歳にしてキングメーカーの地位を確固たるものにした。
 岸田文雄政権下での選挙は4月の衆院補欠選挙を含めて、これで4連敗となった。自民党は自らが推薦する大村氏を「オール静岡」と位置づけ、必死に自民党色を消そうとしたが及ばなかった。
 敗因は何だろうか。投票結果を見ると、思ったほど伊豆での大村氏のリードが広がらなかった。県中部と西部の境界線とも言うべき島田、藤枝などはほぼ互角。半面、浜松市の特に都市部では鈴木氏が大村氏にトリプルで差をつけていた。
 ある袋井市議がこぼしていた。「大村さんは良い人なんだけれども、そのことを説明しようとする前に塩谷立元文部科学相(清和会幹部、離党)のパーティー券収入不記載問題や、宮沢博行元防衛副大臣(離党)のパパ活問題が話題に上がって、謝罪に追われてしまった」
 川勝平太・静岡県知事のようにリニア中央新幹線を屁理屈を連発して止めるという暴挙が問われた県知事選であるはずなのに、その前に「自民党の不祥事」が問われてしまった。岸田文雄首相のまま衆院選に突入することはもはや無理だと思う。岸田氏が辞任もせずに解散に打って出たら、間違いなく自民党は焼け野原になる。岸田首相は自民党を破壊させた暗愚の首相として、歴史に名を残すことになると思う。
 大村慎一氏は某大手企業の広報を務める長女が有給休暇を取って、父に付き添い、涙ぐましい選挙戦を展開した。だが大票田の浜松市などを鈴木氏に抑えられ、逆転は叶わなかった。
 何度も取り上げたが、鈴木康友氏は東京地検特捜部に金融商品取引法違反容疑で東京地検特捜部に家宅捜索を受けた大樹総研の矢島義也氏の刎頚の友である。鈴木氏は矢島氏とともに「S&Y総研」というコンサルタント会社を経営しており、矢島氏が民主党(当時)に基盤を作るのに重要な役割を果たした。大樹総研は太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーに強い会社だった。
 それを裏付けるかのように、鈴木氏は「再生可能エネルギー日本一の県」を打ち出した。大村氏は伊豆では特にここをもっと衝くべきだったと思う。僕の経験でも再生可能エネルギー(太陽光発電所や風力発電所)が争点となった選挙で推進派が勝利したのは記憶にない。メディアは「リニア中央新幹線の是非」や「ドーム型の浜松市の新野球場建設の是非」が争点だと強調した。だが、リニアは両候補とも「推進」を掲げている。争点にはなりようがない。夕刊フジなどは「再生可能エネルギー推進の是非」が争点だと書いていたが、一番の両候補の違いはこの点であって、これを県民に提示できなかったのが、大村氏にとっては痛かった。
 今後、鈴木新知事は、川勝前知事が進めてきた建設費約330億円の2万2000人収容のドーム型球場の建設を加速させるだろう。また、西部に偏重した県政運営をする可能性も非常に高い。さらに伊豆地方では多くの市町村条例がある太陽光発電の乱開発の規制についても、後ろ向きの動きをすることは間違いないと思う。静岡県民にとっては、川勝時代と同様の苦難の4年間となる可能性が高い。だが、済んでしまったことは仕方がない。選んだのは静岡県民なのだ。そして、岸田首相の退陣はマストだ。このまま選挙戦に突入すれば、自民党は終わる。

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