OKINAWA バスケW杯 #7

文化スポーツライターキリンコ

OKINAWA バスケW杯 #7 「沖縄の大逆転」は「沖縄の奇跡」になった

仕事をしながらふとオープンスペースでつけっぱなしになっているテレビに目をやる。災害だったり、大谷の快進撃だったり、地上波というのはニュース、情報番組と名前を変えながら一日中同じ映像を流しているものだ。

今、テレビでバスケが、日本男子のバスケが繰り返し流れているのが信じられない。同僚に「ヒエジマが」と選手の名前を出されても違和感がありすぎて、一瞬誰のことだかわからない。

沖縄の地ですら、お世辞にもW杯ムードとは言い難かった開幕から1週間、バスケは日本に認知された。

残り12分で18点差を逆転したフィンランド戦。残り2分まで負けていたベネズエラ戦。そして71点差で勝ちながら7分間全く得点できず、3点差にまで迫られてから勝ちきったカーボベルデ戦。

バスケは流れのスポーツだから、こんなことはある。今大会でも東京五輪で銀メダルだったフランスが予選敗退し、優勝候補のカナダとスペインは予選で黒星を喫して、決勝トーナメント進出をかけて直接対決することになった。

奇跡が簡単に起こるからバスケは怖いし面白い。簡単に起こるなら奇跡とは言わないか。でも。

満身創痍のベテランと恐れ知らずの若手が、キャラを存分に見せながらマンガのようなストーリーを3試合続けて完成させ、ゴールデンタイムに地上波で流れ、20%以上の瞬間視聴率をたたき出し、「にわか」好きの日本人を見事につかんだ。

そのことが奇跡だ。

奇跡の後に待っているのは決して明るい色の日々ではないだろう。期待されるからこその重圧や批判が今から見える。それでも、それすら喜べるほどに日本のバスケが地を這い続けた時間は長い。

国内の内紛によって国際大会から締め出された過去もある負のエネルギーはたまりにたまって、今回の奇跡だけでは消化しきれていないはずだ。五輪で、W杯で、もう数発の奇跡の花火を、きっと打ち上げてくれる。