パリ暴動のさなかでも、掴んだ2024パラ切符は輝いた

文化スポーツライターキリンコ

パリ暴動のさなかでも、掴んだ2024パラ切符は輝いた  車いすラグビーアジアオセアニア予選

フランス情勢が混乱して2024五輪の開催すら不安視される中、東京体育館で開かれた車いすラグビーのアジアオセアニア選手権。日本は昨年世界選手権で優勝した強豪オーストラリアを決勝で圧倒し、団体競技で第一号のパラリンピック切符を掴んだ。

会場中が赤い応援Tシャツに包まれ、鳴り止まない「ニッポン」コールの中を選手たちが泣きながらウィニングランする。そう聞くとまあよくある優勝シーンの一コマのようだが、車いすラグビーにとってこれは決して「よくあること」ではない。会場に通った4日間が終わり、ふわふわと夢見心地な頭に浮かぶのは、輝かしい勝利のシーンだけではなかった。

運営の涙ぐましい努力によって平日の第一試合は学校観戦の子どもたちで埋まったけれど(応募のあった70校全て招待したそうだ)その試合が終わって子どもがいなくなると体育館はほぼ無人となって、冷房が身体に沁みた。

決勝を戦ったオーストラリアと日本は世界ランキング2位と3位で最高峰の試合を見せたけれど、タイは資金難を理由に大会前に辞退、戦力差の大きい韓国は大会早々に棄権して、その後はハンディキャップありのエキシビジョンマッチとなった。日本でも世界でも、この競技の立ち位置はまだまだ厳しいところにある。

それでも、いやそれだからこそ、よく見る「感動の優勝シーン」を選手と関係者そして観客が一体となって作れたことに価値がある。スタッフは少ない予算でありとあらゆる仕掛けで観客を呼び込み、選手はすさまじい気迫でこたえ、観客はパラスポーツのイメージとはほど遠い熱狂で選手を後押しした。花火は、暗闇の中だからこそひときわ誇らしく輝いた。

今日もSNSのタイムラインには、大会を祝う感動コメントとパリの暴動動画が交互に流れる。スクロールしながら何度でも思う。エキサイティングは、人生の希望だ。