公明党は、中国が自衛隊基地周辺の土地を買い漁っていることを規制するための法案にも強く異を唱え、結局、骨抜き法案としてしまった。

加藤清隆の『俺に喋らせろ!』

公明党は、中国が自衛隊基地周辺の土地を買い漁っていることを規制するための法案にも強く異を唱え、結局、骨抜き法案としてしまった。

 公明党の山口代表は3月30日の記者会見で、新疆ウイグル自治区の人権侵害をめぐり、日本が対中制裁に踏み切る欧米諸国と足並みをそろえるべきかについて「わが国が制裁措置を発動するとすれば(中国当局の)人権侵害を根拠を持って認定できるという基礎がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない」と、慎重な考えを示した。

 もちろん中国が、米国が「ジェノサイド(大量虐殺)」と認定するような非道な行いがあったかどうかの確認は当然必要。しかし米国やカナダ、EU 諸国が何の証拠もなく、このような認定をし、それに基づき、中国に制裁を加えようとしている訳ではない。日本も必要ならこうした国々の情報を共有すれば済むことではないか?その努力もせずに、最初から「証拠がない」で逃げることは、現在の国際社会では許されないことだ。山口代表はこの基本的なことが全く分かっていないとしか言いようがない。

 公明党は、中国が自衛隊基地周辺の土地を買い漁っていることを規制するための法案にも強く異を唱え、結局、骨抜き法案としてしまった。これらのことを考慮すると、もはや同党が与党内にいることは無益どころか、有害ではないのか?自民党は同党と手を切ることも検討すべきだろう。

 山口代表の記者会見での発言を詳細に見てみると、様々な問題を内包していることが分かる。記者が「中国の人権弾圧に欧米が一体となって対中制裁する中で日本はどう対応するのか。また超党派で人権侵害に対する制裁を行うための日本版マグニツキー法制定の動きもあるが」と質問した。

 これに対し山口氏は「日本はこれまでこういう問題への対処は国連を通してやってきた。先日のアラスカでの米中外相会談で激しい応酬があった」とした上で、
 「わが国が制裁措置を発動するとすれば、認定できる根拠がなければ、いたずらに外交問題を招きかねない」
 「人権侵害を確認できていないのが日本政府の立場。慎重に対応する必要がある」
 「欧米諸国は調査能力。利害、いろいろあった上で、外交問題になることを承知の上で対応しているのではないか」
 「日本にとって中国は最大の貿易相手国で、日本企業の工場、店舗、サプライチェーン、教育や文化に携わる人々と圧倒的な交流があり、欧州とは厚みが全く違う」
 「いたずらに摩擦や衝突を招かないで、それを回避するべき」
 「むしろ(欧米と中国の)衝突を治めるような積極的な対話を日本こそ主導すべきだ」

 ここまでの発言で、山口氏が強調しているのは(1)日本には調査能力がないため、ウイグルに対して人権侵害をしている証拠がない(2)いたずらに制裁すれば、外交問題に発展しかねない(3)日本は欧米と中国が衝突しないよう仲介し、対話による解決を主導すべきだーというものだ。

 ここで山口氏が決定的に間違っているのは、中国政府のウイグルに対する深刻な人権侵害は米国をはじめとする国々が既に報告書を作成し、紛れもない事実であるにもかかわらず、いまだに「対話を」などと呑気なことを言っていることだ。現実にジェノサイドが行われ、多くの人間が殺され、民族が根絶やしにされ、しかも文化や伝統を根こそぎ否定されようとしているのに、今さら中国と「対話を」などの提案は噴飯物に過ぎない。山口氏は中国の回し者ではないのか、との疑いすらあるほどだ。

 またマグニツキー法の制定についても同氏は「日本にとっていかがなものか」と否定的で、これまた「ウイグル人人権侵害の証拠はあるのか?」との疑問を持ち出している。

 しかし米国は1月12日の「中国に関する議会・政府委員会」が年次報告書で「酷い人権侵害が行われている」ことを明らかにし、これを受け、当時のポンペオ国務長官がこの行為を「ジェノサイド」と公式に認定した。また3月8日には独立系シンクタンクが「ウイグル・ジェノサイド調査報告書を公表し、「ジェノサイドに関する明確で説得力のある証拠」を提示。「国連ジェノサイド法の全ての項目に違反する」と断定した。

 また米国務省は30日、各国の人権状況に関する「2020年版報告書」を発表。中国による弾圧が続く新疆ウイグル自治区で「市民100万人以上が恣意的な収監やその他の手段で身体的な自由が奪われている」などと非難。「同自治区でジェノサイドと人道への犯罪行為が行われている」と、改めて強調した。

 これらの報告を受け、CNN は「証拠は収集可能な情報、中国政府の公式声明、リーク情報、目撃証言、衛星写真、中国ネット情報」などとし、各国がそれぞれ努力して情報を集めていることを明らかにした。

 これらのことから、日本だけが調査能力がないなどいう言葉で逃げるのではなく、最低でも米国などの情報を共有することが可能なはず。4月初めに行われる日米首脳会談ではこの問題が最重要テーマになる可能性が高く、日本側が何も知りません、何もやってませんで済むのかどうか、ちょっと考えてみれば分かるはず。

 島田洋一教授は著書「3年後に世界が中国を破滅させる」の中で「日本の産業界は余りに中国に深入りしたがゆえに、中共の嫌がらせや資産没収を恐れて身動きが取れない」「そうした財界の怯えを背景に、日本政府も、習近平国賓招待という宥和が以降の旗を降ろせない」と指摘。

 逆に「アメリカの対立激化も辞さない姿勢の背後には、軍事力、金融力、エネルギー自給力、テクノロジー開発を中心とした国力で中国に勝てるとの自信がある」
 「日本も『体幹』に当たる軍事力、エネルギー自給力等の充実を図らねば、中共の傍若無人に毅然と立ち上がる気力すら湧かないだろう」と警鐘を鳴らしている。

 やはり「軍事力、エネルギー自給力のなさが親中派が存在し続ける原因」との見方は当たっているようだ。(了)

公明党は、中国が自衛隊基地周辺の土地を買い漁っていることを規制するための法案にも強く異を唱え、結局、骨抜き法案としてしまった。”へ4件のコメント

  1. keiko i より:

    加藤さん、公明党の山口氏は最初から中国の回し者の様でしたが、今回の件でそれが間違いなかったと証明されたと言うことだと思います。

  2. Teawhoney より:

    調査を言い訳にするのなら、国会に、日本ウイグル協会の皆さんにおいでいただいて、皆さんの苦悩を直接伺ったらどうですか?と言いたいです。
    ネット動画で拝見するだけでも言葉にならない体験を、対面で直接伺って、それでもまだこんな非道な言動ができる議員さんがいるのなら、その議員さんは加害者で、日本国民を代表する資格はないと思います。

    1. sin より:

      日本国籍を取得されている、ウイグルの方に今の惨状を話すのはつらいと思いますが
      日本人の助っ人の心を、呼び覚まして下さい

  3. こまった より:

    公明党は1964年(昭和39年)イスラエルのモサドの指令で結党したものですかと学会員に聞いたら、「イヤーそんな事知らない」と言っていました。

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