小泉進次郎環境大臣と言えば

加藤清隆の『俺に喋らせろ!』

小泉進次郎環境大臣と言えば

 小泉進次郎環境大臣と言えば、小泉純一郎元首相の次男であり、兄は俳優。妻は美人のフリーアナウンサーと華麗なる一族として知られる。その大臣はこれまでちょっと変わった発言をしては話題を呼んできたが、特に害はそれほどでもなかった。

 ところが、このところ菅首相が提唱した「2050年のカーボンニュートラル」政策に深く関与し、これを積極的に推進しようという姿勢を強めている。閣僚の1員だから、首相の政策に協力するのは当然と言えば当然。しかし専門家に言わせると、小泉大臣の発言内容が怪しいといだけではなく、どうも基本的なことを勘違いしている疑いがあるという。

 もしそうだとしたら、この「カーボンニュートラル」政策によって日本の製造業、就中自動車産業に大きな打撃を与える可能性があり、もう笑い話では済まなくなる。直ちに考えを改めてもらう必要があるのだ。

 小泉大臣の最近の発言で最も話題となったのが「プラスチックの原料って石油なんですよ。意外と知られてないですけど」というものだ。さすがにそれはないだろうと、私もツイッターで早速「おちょくっているのか?そんなことは小学校で習うはず。もし本気で思っているとしたら、そんな人がカーボンニュートラルや EV (電気自動車)について発言するのは非常に恐い」と突っ込ませてもらった。

 実はこの発言には続きがあって、あるラジオ番組で「色も匂いもしないから分からないと思うんですけど、石油って化石燃料なんです」。これまた「そんなこと今頃知ったのか」との声が上がったのは当然だろう。

 また政府がプラスチック削減を進める法案を閣議決定したのに合わせ、コンビニでプラスチック製のスプーンやストローの有料化を検討していることを明らかにした上で、「コンビニなどでスプーンなどが有料化されれば、自分でスプーンを持ち歩く人が増えていく。こんなことでライフスタイルを変化させていきたい」と述べたことも話題となった。そもそもスプーンを持ち歩く人間など本当にいるのか疑問。またこれより先、レジ袋の有料化は今でも極めて評判が悪い。必然的にマイバッグを持ち歩く人が増え、万引きが急増しているという。そもそも有料化のメリットが今だによく分からない。

 さて本筋の「カーボンニュートラル」だが、菅首相が昨年10月の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と言明したものだ。しかし2050年のカーボンニュートラルの目標がいつの間にか「ガソリン車をなくすことこそがカーボンニュートラルの必然」という議論にすり替わっている。

 池田信夫氏は「環境相が『カーボンニュートラル』の意味をまるで勘違いしている。『カーボンニュートラル』はCO2という気体の排出量を実質ゼロにすること。化石燃料(カーボン)をゼロにすることではない(そんなことは不可能)。これは名前が良くないのだが、環境相が勘違いしているとは驚いた」と指摘しているのだ。

 このため小泉大臣はどうも勘違いしたまま「ガソリン車からEV のシフトに乗り遅れてはならない」「EVの普及のため補助金を40万円から80万円に倍増する」「脱炭素のドミノを日本中に起こす」「日米同盟の中で脱炭素を広げる。日米交渉の中に2030年のガソリン車廃止を協議する」などと次々とブチ上げているのだ。

 そもそも地球温暖化防止のためCO2を削減するためには、CO2の排出量1位と2位の中国とインドの実行が不可欠。また日本が開発し、CO2排出が非常に少ないハイブリット車はまだ生き残れる可能性があるのだ。

 仮にもし現在のガソリン車が全てEVに変わるとすれば、日本の自動車産業従業員約550万人が路頭に迷うことになる。彼らの納税額は総計年15兆円で、納税額全体の15%も占めている。このため小泉大臣は「日本経済の疫病神」とまでいわれているのだ。

 また日本の乗用車400万台を全てEV化した場合、その電源は原発が新規に10基、火力発電なら20基必要。それらの発電量を風力や太陽光発電で賄うことは全くのまやかし。米テキサス州が今冬の大寒波で大停電に陥ったのは同州が風力発電に頼ったためだ。天候に左右される風力や太陽光発電は非常に不安定で、どうしても火力や原子力に頼らざるを得ない。

 小泉大臣はその点でも、来年で満杯となる福島第1原発の処理水を希釈した上で、海中に放出する決断をする必要がある。こうした喫緊の課題は横に置き、見栄えの良い政策にばかり熱心では、将来トップの座を目指す政治家としては正しい在り方とはとても思えない。まだ若いのだから、いくらでも修正が可能なはずだ。(加藤)

小泉進次郎環境大臣と言えば”へ4件のコメント

  1. しまりん より:

    環境問題って「商売に行き詰まったからルールを変えて新しい商売始めようぜ」ってだけだと思うんですよね。
    自ら得意分野を手放してくれるんですから、諸外国から見たら笑いが止まらんでしょう……。

  2. UUU より:

    「これまでちょっと変わった発言をしては話題を呼んできたが、特に害はそれほどでもなかった。」

    爆笑しました。
    加藤先生、応援してま~す!

    1. こまった より:

      イイネをもう一つ追加したいくらいだ。

    2. Teawhoney より:

      加藤先生の、こういう一言にお人柄のやさしさを感じます。

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